寒いと言えば手を差し出してくれる距離が幸せ




Christmas Magic*



今年は秋がなかった
暑い日が続いたと思えばある日を境に、いきなり寒くなって
12月に最高積雪量を記録する地方もあったとか
そして今日、12月25日、日曜日
雪の降る中呼び出された先は学校近くの公園だった


「寒い、何で雪降ってんの、ありえない、ありえない」
「いいじゃねぇかホワイトクリスマス、つかちゃんと来たんだな」
「うん、マジ、ありえないけど来てやった」
「まあまあこれやるから座れって」
「………」


部屋でごろごろしてると、突然携帯が鳴った
7時に公園に来い…て、その時すでに時刻は6時
髪の毛はぼさぼさだし、部屋着だし、すっぴんだし、間に合いませんよ
まあ文句言いつつも来てあげたわけですけど
何て優しいのかしら、あたし


「はあ」
「ため息つくなよ」


だいたい今日は部活じゃなかったんですか
だから予定してたデートもなくなったじゃないですか
こんなコーンポタージュくらいで許さないよ


「今日…」
「え?」
「M-1見るつもりだったのに…」
「あー…M-1」
「急いで準備したからビデオ予約すんの忘れた…」
「DVD予約してきたから後で貸してやるよ」
「…DVD見れないんですけど、うち」


ベンチに体育座りで座って、顔を膝に埋める
M-1のことが少し、いや本気でショックだ
くそ、これも全部亮のせいなんだから


「何か用だった?」
「や、別に」
「えー?M-1…」
「はあー…」


げ、こいつため息つきやがった
ため息つきたいのはこっちだよ
急に呼び出されるから服装も適当だし
髪の毛も化粧も適当だ
M-1見れないし
すっぴんで出てきても良かったけど、それをしなかったのは
一番可愛いとこを見て欲しいからなのになあ


「今日クリスマスじゃん?」
「ん?うん」
「だから、会いたかった、悪ぃ」


寒いから赤くなっちゃってるのか、照れてるからなのか、分かんないよ
でもきっとあたしもそうなんだろうな
いつもはそんなこと言わないくせに
もしかして、クリスマスだから?


「DVDも俺んちで一緒に見ればいいじゃん」
「…そだね」
「だから明日は忍足と喋んなよ」
「忍足?何で?」
「あいつ絶対M-1見てるから、ネタから結果まで全部話してくれるぜ?」
「…ああ」
「俺もと見るときまで見ねぇし」
「うん」


ずるずる、と鼻をすすりながら亮は話す
照れてるときの、くせだ
鼻は真っ赤で寒そうだなあ、なんて見上げていると目があった
寒い?なんて聞かれたけど大丈夫だよと答えた


「寒いって言えよなー」
「は?何それー」
「…これ」
「ん?」


渡されたのは紙袋
クリスマスっぽい印刷がされている紙袋
その中にはマフラーが入っていて
寒いと答えなくちゃいけなかった理由が分かった
亮って結構かっこつけだからなあ


「あは、激ダサー」
「うっせ」
「あはははは、マジ激ダサ!」
「あーもう、うるせ…へっくし!」
「あれ?寒いの?」
「や、大丈夫」
「寒いって言ってよ」
「は?」
「手ぇ繋ごうと思ったのに」


ジャケットのポケットに無理矢理つっこんでる亮の手を
引っ張り出して、あたしの手で包んだ


「パクりじゃん」
「うるせーやい」
「つーかの手も冷てぇんだけど」
「あれ?まだ足りなかった?」
「は?」


ちゅ

温かさが足りないという
確かにマフラーに比べたら、あたしの冷たい手じゃ足りないかもね
だからもっと温かくなるように
あたしからキスをした


「温かくなった?」
「…おお」
「顔真っ赤ですよお兄さーん」
「うるせぇばか


寒さと照れで鼻が真っ赤なこのトナカイさんは、サンタさんみたいにみんなに希望という名のプレゼントを配ることはできないかもしれないけど
あたしは幸せという名のプレゼントを十分なほどにもらってるよ


「ああ、そういえば」
「んだよ」
「メリークリスマス…って言ってなかったね」
「…メリークリスマス」
「ホワイトクリスマスだし、ロマンチックだねえ」
「お前最初雪に切れてたじゃん」
「そんなこともあったねえ」


そう言えば、最初のイライラなんてどこにいったんだか
もしかして、これもクリスマスのなせる技?
文句言いつつも、久しぶりのホワイトクリスマスに浮かれちゃってるのかな、あたし


「来年もホワイトクリスマスだといいな」
「来年?」
「だって今年いきなりだったもん、来年はちゃんと準備して、遊んで…」
「雪なんか降らなくてもいいじゃん」
「えぇー?」
が来年も隣にいてくれたらいいや」
「…じゃあ仕方ないから再来年もその次もいてあげるよ」
「おお、いいねー」


それは不確かな未来の約束
だけどどうしてかな?
そうは全く思わないんだ
今日がクリスマスだからかな
隣にいるのが亮だからかな
ああ、でもそれだけじゃなくて


「帰るか」
「うん」
「M-1明日見に行くからねー」
「お…ん?え、あ、おう」
「あは、どもりすぎ」


繋いだ手から伝わってくるんだ
あふれるほどの、愛が
クリスマスに降るロマンチックな雪と一緒に


「好きだー」
「は?お前最初とテンション違くね?」
「好きだよ亮ー」
「おおー…まあ、俺、も好きだけど…」


その言葉が一番の、マジックなのかもね






Sailorの田中花さんから頂きました!クリスマスフリー夢!!
やったー!!!宍戸ですよ、宍戸!!!
素敵宍戸!!
例えどんなに寒いクリスマスだとしても、こんな宍戸に誘われたならどこにでも行きます!!! というわけで、素敵夢ありがとうございましたー!!!!